手術は無事完了したが………

翌朝8時半に、執刀医の説明を受け、1時予定が一時間早まった12時に
母は手術室に運ばれていった母。
さっきまでは、平静を装っていたが、いよいよとなるとやはり不安顔。
全身麻酔だから、知らない内に終わってるよ!」
あたしの麻酔体験を話してあげたいのは山々だけど…

待つこと3時間半。
3時半頃に手術室に呼ばれて、
まだオペは完了してないが、開腹と切除結果の説明。
切除した左下葉を見せられながら、
手術のなりゆきを説明された。

目の前には赤い大きな肉片が乗ったトレイ。
握りこぶし2つ分くらいの赤い肉のかたまり。
それを目にしただけで、私は泣き出しそうです。
こんなに大きな物が母の胸の中から取り出されたのかと思うと、
胸が痛み、涙がこぼれそうに。

名医と定評のある執刀医師の表情はなぜだか暗い。

「予定されていた左下葉は摘出しました。これが、癌です。予想より大きく六センチ大。
他にもうひとつ上葉との境目にも見つかり、それも摘出しました。
上葉の疑いのあった箇所は、癌ではありませんでした。…が、
これ、小さい黒い点が見えますか?
播腫と言って、切除した下葉を中心に上葉、肋骨にまでひろがっています。
転移ではないのですが…」
要は種子をばらまくように広がった癌の種。
これは取りようがないらしい。
後は抗癌剤が頼みの綱。
それも効果があるかどうかは人それぞれ。
副作用の怖さが問題の薬も効くかどうか。

それからさらに30分後、縫合も終わって四時過ぎ、
今度はICU室に運ばれていった母に面会。

麻酔も切れたばかりで、顔色もなく、死人のような唇の母。
麻酔直後で意識はあるが、冷たく、顔色もなく、管だらけの母と面会して、
その顔を覗き込みながら、あまりの痛ましさに、溢れてしまう涙。
私は涙が止まらない。
手術は成功ということにしなければならないのに。

しばし励ましの言葉。本人も意識はあるが、朦朧と。
寒い寒いという母の訴えを看護士に伝え、後ろ髪を引かれる思いで室外に出た。
さらに待つ事2時間。6時に再度面会。やや顔色が戻ったような母。
何も言えない。
9時過ぎ。ようやくICUから解放されて、元の病室に。
顔色は随分赤身をさしてきたモノの、痛々しさには変わりなく。
他の皆は一旦来たくさせて、兄と人で今後の相談。
兄を実家に帰し、私はベッドの横の簡易ベッドで眠る事に。
うとうとはするもののほとんど眠れない様子の母の手を握りしめて
簡易ベッドによこになるが、十分おきくらいに起こされて、
痰を受けたり、水で湿らせたり、眠れたと思ったら、
私自身が悪夢にうなされて、逆に母に起こされたり。
しかし、いずれにしても、目的の手術は無事終わった。
あとに残ってしまった癌の有無や検査、今後の方針はこれからだが、
とにかく、当初の第1の目的は果たせた。
お疲れさま、母さん。