覚悟。

昼過ぎに会社から母に電話をした。
昨日は、電話しても出なかったのは、
眠ってたのと、母の携帯がマナーモードになってたから。
マナーを外して、小音量の呼び出しにしておいたので、
今日は出てくれた。
でも、元気のない声で、
「眠たい…あんた、近くにいてよ…」
え?どういうこと?
「今会社だから、近くよ。」
「遠いな…すぐに来れるようにしといてもらわんと…」
そういうこと。
眠いのは、薬のせいであって、
まだそんな時期じゃないはずなのに。
母の中では、もうすっかり覚悟が出来てて、
あるいは、悟りの境地に入ってしまってて。

夜、病院に行ってみると、
昨夜と同じように、半分眠ったような、うつろな顔で、
でも起きていて、短い会話を何度かかわした。

看護士から伝言で、
食事は摂れてないが、アイスクリームとか、おやつは食べてるので、そんなに心配しなくていい。
有料のお部屋を、A医師の配慮で、昨日から無料室扱いにしてくれてるそう。

目をつぶったり、半分開けてたり、
静かにしている母の側で、手を握ったり、
背中をさすったり、
すっかり白髪の頭をなでたり、
そんなことをしていると、
ふいに涙がこぼれてとまらなくなった。

もう、母が見ていようがいまいが、
涙を隠す事はしなかった。